アトランティス アイゼン

 
〔トピックス〕
障害児の成長と発達を促す住環境整備に関する研究
障害児の家族向け自宅内排泄環境整備
アセスメントツールの研究・開発
研究所 障害工学研究部 植田 瑞昌、東 祐二

 研究所・障害工学研究部では、さまざまな工学的技術を活用して障害者のQOL向上、社会参加支援に寄与する研究・開発を行っています。専門分野も生体工学、電気・電子工学、情報・ロボット工学などさまざまであり、私は建築学を専門とし居住環境・まちづくり・生活環境全般に関する研究・開発を行っています。そこで、障害のある子どものための家族向け排泄環境整備アセスメントツールの研究・開発を行ったのでご紹介します。

1 障害児の排泄環境整備の意義と課題

 脳性麻痺や神経難病等に起因する重度の障害のある子どもは、日常生活全般において長期的な介助を必要とする場合が多いです。また、排泄行為は生命・健康を保つために欠かせない重要な行為のひとつです。同時に、排泄動作の獲得までにはたくさんの感覚・運動・学習機能を必要とします。そのため、子どもの成長や発達を促すためにはそれらの機能を十分に発揮できる環境を整える必要があります。その他にも、介助負担の軽減を図るための環境整備も必要となります。
 しかし、重度の障害のある子どもの排泄動作が自立するためには難易度が高く、毎日の排泄介助は家族の身体的・精神的負担が非常に大きいのが現状です。そのため、排泄機能に障害はないが児童期、青年期に至ってもおむつのみを利用する場合も少なくありません。環境を整えることでトイレにおける排泄が可能となる場合がありますが、おむつ以外の排泄方法の検討に至らない要因として、@成長期(発育・発達期)の障害児に配慮した住環境に関する整備指針がないこと、A排泄動作獲得の好期に環境を整備することに対する、家族の認識を促す情報が不足していることなどがあげられます。また、既存の研究では、成長期にある障害児の状態に配慮した環境整備に関する研究報告がありません。

2 自宅内排泄環境整備アセスメントツールの開発コンセプト

 子どもは毎日少しずつ成長していきます。成長と発達に大切な時期を逃してしまわないように、適切な時期に適切な環境を整える必要があります。そこで、一番近くで成長と発達を見ながら育児をしている家族が主導的に環境を整えるきっかけとなるような「気づき」と「ヒント」を得るためのアセスメントツールの開発を行ってきました。研究・開発にあたっては、障害のあるお子さんの自宅に訪問し、排泄状況と自宅内の排泄環境を把握し、さまざまな情報等をいただきました。また、アンケート調査によりアセスメントツールに関するニーズ等を把握しました。アンケートの結果やご家族のご協力をいただきながら、専門家(PT・OT・建築士)と検討を重ねました。
 作成するにあたり大切にしたことは、住宅事情や家族の「カタチ」や価値観はさまざまであるから、アセスメントした結果、排泄環境整備の内容が一つにならないように工夫しました。また、トイレにおける排泄が最終目的ではなく、排泄環境を整えるプロセスも成長や発達には重要となることを理解してもらえるように考えました。さらに、排泄環境の不安解消や気づきのきっかけになるように慎重に検討し、自由閲覧をする形式よりも、むしろイベントや勉強会等を通じて、住環境や子どもの状況に合わせて具体的にイメージし、専門職への相談につながるよう配慮しました。

3 家族向け自宅内排泄環境整備アセスメントツールの構成

 開発したアセスメントツールの対象者は、肢体不自由のある子どものいるご家族向けとし、小学校入学前に活用してもらうことを想定しています。A5サイズ32頁フルカラーの小冊子とし、タイトルは「障がいのあるお子さんのこころと体に合った排泄スタイル〜住まいのくふう〜」としました。構成は以下の通りです。

 1.はじめに排泄環境を整えるメリットや意義を解説
 2.自宅のトイレ環境を簡単に把握し、アセスメント部分として、身体機能や
   ライフステージ、現在の排泄場所を把握する
 3.子どもに合った排泄環境整備のプランを参照する
 4.住まい全体の工夫を把握する

 

 アセスメント部分はマトリクスとなっており、該当する箇所の周辺のプランをチェックすることで、成長と発達に合わせた対応の仕方を知ることができます(図1、2)。プランは全部で17種類とし、調査で得られたご家族の体験談やアイディア・工夫を掲載するなどイラストを多用し見やすくデザインしました。
 また、排泄環境整備は入浴と同時に考える家庭や住み替えを視野に入れた住環境整備を行うことも少なくないため、住まい全体の環境を整えるポイントを示しています。
 以上、今回研究・開発した家族向けのアセスメントツールについて紹介しました。当面は、イベント等を通して、専門職と一緒に活用していく予定です。障害のある子どもの状態に合わせた排泄スタイルを考えるきっかけになると嬉しいです。
 調査にご協力いただいたご家族の皆様に厚く感謝申し上げます。
 なお、本研究の一部は、JSPS科研費JP19K23563の助成を受けて調査・研究を行いました。
 お問い合わせ先:障害工学研究部(担当植田)


図1 アセスメント部分

図2 プラン例